HOME > エキスパートコラム > 薬剤選定 > 亀田総合病院における抗がん剤の注射製剤に期待するもの
2014.6.16

亀田総合病院における
抗がん剤の注射製剤に期待するもの

カテゴリー: 薬剤選定
亀田総合病院 薬剤部 部長(執筆当時) 佐々木 忠徳 先生

 最近、がん治療薬はがん細胞の増殖や浸潤、転移などに関わるがん細部特有の分子をターゲットとする分子標的薬が多く占めるようになり、治療効果に期待されてきています。また、がん治療を受ける患者は増加の一途であり、その医療費の高騰は今後ますます社会問題となってくるでしょう。そこで抗がん剤治療において、より廉価なジェネリック医薬品への変更は薬剤師の重要な役割として期待されています。また、これからは分子標的などを含めバイオ後続品への切り替えの検討もされてきています。そこで、特に各医薬品メーカーから販売されている抗がん剤を選ぶときに剤形、規格あるいは容器などに期待するもの3点に絞って私見を述べたいと思います。

品質管理と製剤情報

 医薬品の効果あるいは有害反応はその主成分あるいは添加剤に関連しています。添加剤についてはその成分や量については当局において承認されたものを使用されているため、注射剤において特に問題となることはありません。主成分である原料については純度試験を含め、各医薬品メーカーの管理体制が重要であると思われます。従って、品質管理が重要であると思います。純度試験に加え、安定性や溶解性の情報などがあればより使用し易いと思います。

調製量に応じた規格

 抗がん剤は個々の患者の体力(PS)あるいは体格によって用量を調節するという特徴があります。従って、抗がん剤の調製には調製量に応じた規格があることで廃棄量を軽減できます。また、医療経済的にも優位になります。在庫管理さえ十分に行えば、材料費を最小限に抑えることができます。

曝露対策の行われている製品

 今でこそ、抗がん剤のアンプル製剤はなくなりましたが、以前には破損が問題となることがありました。しかしながら、すべてがバイアルになったとしても落下による破損がゼロになったわけではありませんし、重要なこととして調製者の被爆の問題があります。この問題を解決するためには、破損しない工夫、あるいは洗浄などを配慮した包装が医療従事者にとって使い易いものであると言えます。また、閉鎖式器具などを使用する際には、これとの相性といいますか取扱い易いものを選ぶ必要もあるかも知れません。

まとめ

 以上、簡単に抗がん剤を選ぶ際に注意したい代表的なものを紹介しました。まだ他にもあるかも知れませんし、これらをすべて満たす製剤は無いかも知れません。日常業務の中で、すべての患者、医療従事者にとって安全・安心ながん化学療法を実施できるような環境を作るためにも、適切な製剤を選択する必要があると思います。

エキスパートコラム