薬剤師外来の現状と加算を見据えた今後の課題

化学療法室の概要
病床数 16床 化学療法室担当薬剤師数 午前5~6名、午後2~3名
化学療法件数 入院 7.5件(2-20件)/日、外来 24.8件/日(12-39件)
がん薬物療法体制充実加算の算定件数
令和6年6月:40件、令和6年7月:36件、令和6年8月:36件
算定割合(がん薬物療法体制充実加算算定患者数/外来化学療法診療料1算定患者数)
令和6年6月:15.0%、令和6年7月:13.0%、令和6年8月:12.6%
当院の薬剤師外来は化学療法室に設けており、ネット端末、電子カルテ、ラベルプリンター、本棚、大型のプリンターを設置している(図1)。担当は、相互チェックなどができるよう化学療法室のメンバーから2名ペアでの週替わり制としており、基本はそのうち1名で対応、混雑時には看護師がウィッグなどを説明するパーティションで区切られた部屋を利用して2名で対応している。
図1 化学療法室に設置した薬剤師外来の診察室

薬剤師外来の導入経緯
薬剤師外来は2017年より、化学療法主任と外来がん治療認定薬剤師を取得して間もない私の2名で担当し、残りのメンバーは調製・処方チェックを行う体制で開始した。薬剤師外来導入に際して問題となったのは、「場所」「患者動線」「予約方法」「人員」の4つであり、それぞれ解決に至った経緯を述べる。
場所・患者動線
薬剤師外来導入以前の患者動線は、受付→採血室→診察(外来棟)→化学療法室であり、薬剤師外来を外来棟と化学療法室のいずれに設置するかが問題となった。看護師は、患者動線や移動距離の長さから外来棟との意見が多く、薬剤師はスペース・資材の充実さ、無菌調製室(化学療法室併設)が近いことでの相互フォローの容易さ、ベッドサイド薬剤指導兼務の容易さなどから化学療法室との意見が多かった。そのような中、当時の外科部長より「移動距離は長くなるが、これくらいの距離を歩けない患者さんでないと化学療法はできない」との意見があり、化学療法室に薬剤師外来を設置することとなった。薬剤師外来と化学療法室業務を互いにフォローできる環境にすることで、結果的に後述する人員の確保にもつながった。
予約方法
予約システムには外来予約と同様に薬剤師診察前問診の枠を作成できたが、「誰が予約をいれるか」が問題となった。開始後の予約数がまったく予測できず、対応できないほどの多数の予約が入る懸念もあったため、薬剤師の判断で患者選択をして薬剤師外来の予約をいれることにした。具体的には、初回治療、ハイリスクな治療、アドヒアランス不良な患者などを選択しており、そのほか医師や看護師から個別の依頼があれば予約対象とした。このような方針と化学療法室で薬剤師外来を行っていることから、化学療法室を利用しない経口薬や皮下注射製剤のみの患者、緩和ケアの患者への介入は少数にとどまっている。
人員
薬剤師外来の導入にあたっての増員は困難であり、業務を見直して削減可能な業務を削って人員を確保することにした。従来からベッドサイド指導を行っていたので、同じ薬剤師が薬剤師外来も兼務することとした。また、当院では元々調製時間による患者待ち時間の発生がほとんどなかったため、調製担当薬剤師の削減による多少の待ち時間発生はやむを得ないとした。このような形で確保できた人員で、行える範囲から少しずつ薬剤師外来の運用を開始した。
薬剤師外来の現在と課題
現在、薬剤師外来は1日平均4.4件(2~10件)、面談時間5~15分、記録作成5~15分で行っている。面談後は、電子カルテ患者掲示板に面談内容の要点と、必要に応じて休薬や支持療法の変更、併診の依頼を記載している(図2)。肺炎症状などの緊急を要する場合は電話連絡し、併診についても事前連絡をしておくと主科の診察前に受診するよう指示されることもあり、効率的な診療が可能となっている。また、当院では専任の管理栄養士も半日常駐し積極的に介入しているため、味覚異常や食事摂取不良がみられる場合は、栄養士に声がけをして栄養補助食品などの紹介や必要に応じてNST外来の併診も依頼している。
図2 面談後の電子カルテへの記入例

なお、当院では抗がん薬調製用の注射処方箋と同時にお薬手帳シールの形式で情報提供書が自動発行されるようになっており(図3)、化学療法室で実際の処方内容、副作用発現状況に合わせた薬剤指導と情報提供書の提供を行っている。
図3 情報提供書

薬剤師外来に対する評価は患者、医療者ともに良好であり、医療者からはより多くの患者への実施要望があるが、直近3年の薬剤師外来面談件数は横ばいとなっている。現状では、人員の増員は難しく、どの診療科も診察時間がほぼ同じであるため診察前面談が9時~11時に集中し、1名体制では対応の限界に達している。では2名体制にできるかというと、がん薬物療法体制充実加算の点数では増員するには不十分であり、無理な面談数増加は質の低下に繋がるので行うべきではないと考えている。安全性と質を優先し、他職種とも協力しながら無理をせずにできる範囲で薬剤師外来の運営していくことが当分の方針である。
