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2025.2.10

けいゆう病院 薬剤部におけるがん薬剤師外来の実際
~from build up to brush up~

けいゆう病院 薬剤部 小澤 有輝 先生
小澤 有輝 先生

化学療法室の概要
利用者 約15-25名/日 介入方法:ほぼ診察後 介入場所:チェアサイド
薬剤師外来の概要
利用者 約5-15名/日 介入方法:診察前 介入場所:面談室
がん薬物療法体制充実加算の算定件数
令和6年6月:7件、令和6年7月:9件、令和6年8月:8件
算定割合(がん薬物療法体制充実加算算定患者数/外来化学療法診療料1算定患者数)
令和6年6月:2.6%、令和6年7月:3.3%、令和6年8月:2.9%

 当院では、2013年より化学療法室での全例介入を開始し、その後、経口薬のみの患者への一部介入、乳腺外科の依頼制による介入開始を経て、2020年より全診療科の経口抗がん薬単独治療を対象に薬剤師外来を開始している。

薬剤師外来開設の経緯

 薬剤師外来開設にあたっては、「患者ファースト」「他職種ファースト」「クオリティ重視」の3点を考慮し(図1)、対象患者、面談時間、院内周知の準備を行った。

図1 薬剤師外来開始にあたり考慮した点
図1 薬剤師外来開始にあたり考慮した点

対象患者

 対象患者はなるべく幅広く、かつ他職種にもわかりやすく設定するという観点から、治療開始時の初回指導は内服薬も含む「がん治療に使用されるすべての薬剤を投与する患者」を対象とし、治療開始後の診察前面談は「内分泌療法を除くすべての内服抗がん薬を投与している患者」を対象とした。抗がん薬治療を始めるすべての患者を薬剤師外来に案内するようにし、初回面談終了時に経口投与の患者は2回目の薬剤師外来を予約、点滴投与の患者は化学療法室でのベッドサイド指導に移行するというシンプルな運用を行っている。

面談時間

 患者待ち時間を短縮し、外来診療を遅延させない一方で、十分な面談時間を確保することを実現するために、まず薬剤師外来の担当は専門資格を有する薬剤師とし、できるだけ同じ患者を継続して面談できるよう曜日担当制とした。さらに、副作用が落ち着いている患者では面談希望がない場合もあると考え、患者と相談のうえ薬剤師外来を終了するようにしている。これにより、面談患者数の増加も調節でき、面談時間の確保に繋げている。

院内周知

 十分な周知が必要と考え、各科の医療秘書、看護師に個別説明を実施し、がん関連の認定看護師からは外来看護師会議でアナウンスするなど、できるだけ直接的な周知活動を行った。医師には個別に説明し、可能であれば診療科カンファレンスに出席して周知を図った。なお、運用の参考にするため、説明時には薬剤師外来についてのニーズ聴取も行った。

薬剤師外来の実運用

 予約システムの都合上、化学療法室のベッドの1枠を薬剤師外来として作成し、予約を受け付けている。
 薬剤師外来を訪れた患者が受付に設置の呼出ベルを鳴らすと、助手が来て受付カードを受け取る流れになっている(図2)。カードは2枚一組になっており、1枚は患者、もう1枚は助手が裏側に患者名・受付時刻をメモして面談室内の掲示板に貼付し、担当薬剤師は掲示板を確認することで待機患者の情報を得られるようにしている。

図2 薬剤師外来の受付
図2 薬剤師外来の受付

 面談では、クオリティを上げる補助グッズとして、血圧計、パルスオキシメーター、手袋、カメラ、体重計、テーピング・保湿剤・口腔ケアグッズ・綿手物サンプル、栄養補助食品カタログを常備している。

 面談後の情報共有は、副作用評価と提案事項の2つを、電子カルテに直接記載するのではなく、付箋と呼ばれる連絡機能を介して行っている。電子カルテに直接入力したほうが早いが、医師から共有内容を見落とさないよう付箋機能での入力要望があったため、他職種ファーストの観点から付箋機能を利用している。

 次回予約は、効率は悪くなるものの予約漏れを防ぐため、外来予約確定後に薬剤師が入れるようにしている。患者帰宅後に予約を入れることもあるため、予約票には薬剤師外来の予約が表示されない場合があるが次回来院時の受付票には表示される旨を、面談の際に伝えるようにしている。

薬剤師外来のブラッシュアップ

 薬剤師外来の診察前面談は、後に控える診察に直接的に影響するため、的外れな情報共有を行うと医師との信頼関係が低下してしまう。これを回避し、医師との信頼関係を構築するには継続的なブラッシュアップが不可欠である。私見ではあるが、薬剤師外来に求められるスキルとして、

  • ・専門薬剤師に準じる「がん薬物療法全般知識」
  • ・カルテや血液検査結果などの情報が不十分な状況でも限られた時間にスピードをもって評価・提案できる「個人の臨床力」
  • ・どの担当者でも高い質の介入が行える「チームの臨床力」
  • ・患者・他職種との「コミュニケーション力」

の4点が必要と考えている。このうちチームの臨床力向上のためには、1日の業務 の終わりに15~30分程度の振り返りカンファレンスを実施しており、介入内容の評価・共有を毎日行っている。また、医師とのコミュニケーションについては、電子カルテ上の情報共有だけでなく、診察室に出向いたり、診察時間以外でコミュニケーションをとったりしており、特に学会発表や論文執筆を共同で行えると、その過程において良好な関係を築けると考えている。

 このように業務の振り返りとブラッシュアップを図ることで、好循環を生み出していければ、より良い薬剤師外来を運用できると考えている。

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