ディスカッション
座長:
神奈川県立足柄上病院
薬剤科
原田 知彦 先生

演者:
北里大学病院
薬剤部
稲野 寛 先生

国家公務員共済組合連合会
横浜南共済病院
薬剤科
横山 敦 先生

けいゆう病院
薬剤部
小澤 有輝 先生

原田先生:ディスカッションでは、講演いただいた3名の先生から1問ずつ質問を出していただき、それについて意見交換を進めていきたいと思います。
がん薬物療法体制充実加算導入後、診察前面談の介入回数はどう考えますか?
横山先生:算定は気にせず、現状通り患者ごとに必要な回数介入し、落ち着いてきたら終了するという方針になると思います。
小澤先生:横山先生と同じです。算定にこだわって件数だけをこなすようでは意味がないですので、クオリティを重視してやっていきたいと考えています。
稲野先生:そうですよね。一方で、平等に診察前面談を行う必要性もあると思いますがいかがでしょうか。当院では不平等が課題となっており、是正する目的で全ての患者を対象に、初回面談にて副作用に問題がなければ薬剤師外来は一旦終了するようにしています。
小澤先生:薬剤師外来の周知という点では平等性を担保すべきなので、すべての対象患者に知らせるべきだと思います。しかし、実際に介入するかは、副作用によって異なりますし、薬によっては診察後面談のほうが望ましいこともあるので、臨機応変に対応していくのが良いと思います。
横山先生:当院の規模では一律に行うのは難しいので、ePRO(electronic Patient Reported Outcome)などを利用していきたいと考えています。また、小澤先生の意見のように、irAE(免疫関連有害事象)などは診察前面談では拾うのは難しいので、診察後面談が良いと思います。
原田先生:薬によって診察前・後を使い分けるのは、合理的な対応だと思います。
人員不足や病棟業務が優先される中で、化学療法室と病棟業務との兼ね合いや連携はどのようにされていますか?
稲野先生:入院中の薬剤管理指導は病棟担当が行い、入院から外来に移行する際は記録を介した引き継ぎを基本としています。
小澤先生:当院では、持参薬鑑別や初回面談は病棟担当が行い、抗がん薬治療の薬剤管理指導は化学療法室担当が行っています。
原田先生:どこも人員不足な状況で、病棟が手薄なうちは外来に業務を割り振りにくい状況だと思いますが、いかがでしょうか。
小澤先生:当院での薬剤師外来業務の院内の外来業務のピースの1つになっているので、病棟が人員不足だからといって外来を減らすことはできない状況になっています。講演で周知についてお話ししましたが、こっそり始めていつでも撤退できるようにするのも1つの手だと思いますが、「薬剤師外来を始めます」と他職種も巻き込んでコンセンサスを得てしまったほうが、外来業務を推進するという意味では良いのかなと思います。
横山先生:現在、私は化学療法室の業務は補助的で血液内科病棟を主に担当しているのですが、血液内科病棟は化学療法室が関与したほうがよいと思っており、小澤先生の施設のように抗がん薬治療には化学療法室が関与するのは良いと思います。
小澤先生:この体制の良いところは、入院から外来に移行するときや外来から緊急入院となったときでも、シームレスに関われる点だと思っています。
稲野先生:小澤先生の意見はごもっともで、化学療法の間が空くと情報収集に難渋することがあるので、当院でも取り入れてみたいなと思いました。
薬剤師外来のクオリティを保つために、担当者の経験年数や認定の有無などはどのように考えていますか?
稲野先生:診察前面談は限られた情報と時間で、患者さんの不安を助長させずに適確に関わることが求められるので、それをこなせる能力として認定取得は基準の1つにはなると思います。ただ、資格があってもコミュニケーション力が不十分な方はいますので、認定ありきではいけません。
横山先生:当院では若いメンバーも含めていろいろなメンバーが担当していますが、薬剤師外来の近くの調製室には認定者が1,2名いる状況になっていて、そのメンバーが記録などのチェックを行っているので、最低限のクオリティは担保できていると思っています。
小澤先生:若いスタッフが担当を始めるときの基準のようなものは設けていますか。
横山先生:ないですね。当日の検査値チェックやオーダーチェックなどが一通りできるようになったら、外来業務を開始してもよいという感触でしょうか。
稲野先生:同じく基準は設けていないですね。ただ、教育上の計画は作っていて、目標をクリアしたら次に進めるようなことはやっています。また、外来でいきなり全診療科というのは難しいので、診療科を絞って始める形にしています。
原田先生:やる気も重要ですよね。「これやってみる?」と聞いて「やります」と言う方は吸収も早いですし、私達の立場だと嬉しいですよね。
以上で、ディスカッションを終了したいと思います。がん薬物療法体制充実加算は、がん薬物療法への支援という意味ではこれまでと同じですが、医療従事者の業務効率のアップという付加価値が付いてくるものだと思っています。また、他の領域でも薬剤師外来は行われていますので、今回の我々の取り組みが今後の展開に大きく影響していくと思います。本セミナーを通して、薬剤師外来を始めようと思う施設が1つでも増えたら幸いです。
