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2025.01.09

BCD療法

監修群馬大学医学部附属病院 薬剤部 勝見 重昭 先生

このレジメンの重要事項・ポイント等

Drからみたポイント

  • ○2023年度版造血器腫瘍診療ガイドライン1)において、BCD療法は、BLd療法(BOR、LEN、低用量DEX)、Bd療法(BOR、低用量DEX)、BTd療法(BOR、THAL、低用量DEX)、BAD療法(BOR、DXR、DEX)、Ld療法(LEN、低用量DEX)と並び移植適応の未治療多発性骨髄腫に対する代表的な寛解導入療法として推奨されている。
  • ○BCD療法とBAD療法との比較試験において、寛解導入療法後のVGPR以上の奏効割合で非劣勢が証明され、重篤な有害事象はBCD群で少なかった2)
  • ○治療開始前に全身状態(Performance Status)、骨髄機能、肝機能、腎機能、心機能、肺機能などの臓器機能について確認する。

薬剤師からみたポイント

  • ○中等度催吐性リスクに分類されるレジメンであるため、適切な制吐療法を実施する。
  • ○日和見感染の発症リスクが増加するため、アシクロビルおよびST合剤の投薬を行う。
  • ○治療開始前に肝炎ウイルス感染の有無を確認し、肝炎ウイルスキャリア症例においては、「免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン」に従い適切な処置を行う3)
  • ○血液毒性(好中球減少、血小板減少など)や非血液毒性(末梢性ニューロパチーなど)を認める場合は、文献等の投与基準を参考に減量または中止などを考慮する。
  • ○末梢神経障害は、投与前に基礎疾患(糖尿病など)の有無について確認し、発現リスクを評価する。また投与後は定期的にGrade評価を実施し、投与基準を参考に減量または休薬など適切に対処する。
  • ○ボルテゾミブは末梢神経障害の他に、急性肺障害、心障害、発熱、皮疹、下痢などの副作用発現にも注意する。
  • ○シクロホスファミドによる出血性膀胱炎の予防策である、こまめな飲水と排尿を患者に指導する。

看護師からみたポイント

  • ○感染症対策が重要であり、日常生活での感染予防について注意喚起を行い、発熱時の対応や医療機関への連絡方法などについて事前に患者と確認しておく。
  • ○ボルテゾミブを皮下投与する場合は、注射部位反応(疼痛、炎症、硬結など)が現れることがあるため注意深く観察する。また、硬結予防の観点から左右の大腿部、腹部等に交互に投与するなど同一注射部位を避ける。
  • ○末梢神経障害は日常生活に影響を及ぼす可能性があるため、早期発見に繋がるように観察する。
1) 日本血液学会 編; 造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版. 第3版, 金原出版. 2003.
2) Mai EK, et al: Leukemia. 2015; 29(8): 1721-9.
3) 日本肝臓学会 肝炎診療ガイドライン作成委員会 編; B型肝炎治療ガイドライン(第4版)2022年6月

副作用の詳細

副作用の発現率

70歳以下で未治療の多発性骨髄腫患者を対象としたGMMG-MM5試験1)におけるBCD療法(n=250)の有害事象は白血球数減少/好中球数減少(≧Grade 3)35.2%、感染症および寄生虫症(≧Grade 2)22.4%、ニューロパチー(≧Grade 2)8.4%、貧血(≧Grade 3)6.8%、胃腸障害(≧Grade 3)6.4%などであった。

1) Mai EK, et al.: Leukemia. 2015; 29(8): 1721-9.

主な副作用有害事象共通用語基準

副作用名 主な症状 薬剤による対策 指導のポイント
肺障害自覚症状でわかる
  • ●咳嗽
  • ●息苦しい
  • ●発熱
    など
  • ●ステロイド
  • ●ステロイドパルス療法
  • ●抗菌薬
  • ●抗真菌薬
  • ●早期発見のポイントは、患者本人による自覚症状の気づきであるため、肺障害の自覚症状について説明し、疑われる症状がみられたら速やかに医療機関に連絡するようにする。

発現時期の目安
day1-

心機能障害自覚症状でわかる
  • ●息苦しい
  • ●息切れ
  • ●むくみ
  • ●倦怠感
    など
  • ●β遮断薬やACE阻害薬を考慮
  • ●心機能障害を疑う症状がみられたら速やかに医療機関に連絡するようにする。

発現時期の目安
day1-

好中球減少検査でわかる
  • ●易感染
    (自覚症状に乏しい)
  • ●好中球数1,000/μL未満で発熱、または好中球数500/μL未満になった時点でG-CSFを考慮。
  • ●発熱時:抗菌薬(レボフロキサシン500mg/日、シプロフロキサシン600mg/日など)
  • ●発熱性好中球減少症発症後は、患者のリスク因子に応じて、ペグフィルグラスチムの使用も検討する。
  • ●自覚症状がないため、感染の予防・早期発見が重要である。
  • ●悪寒・発熱時の対処法と医療機関に連絡するタイミングを確認する。
  • ●手洗い、含嗽、歯磨きの励行する。
  • ●シャワー浴などによる全身の清潔を保持する。
  • ●外出時はマスクを着用、可能な限り人混みは避ける。
  • ●こまめに室内を清掃する。

発現時期の目安
day7-28

血小板減少検査でわかる
  • ●皮下出血
  • ●粘膜組織からの易出血
  • ●血小板数だけでなく、出血症状、合併症、侵襲的処置の有無等を総合的に考慮して、血小板輸血を検討する。
  • ●歯ぐきや鼻粘膜などの粘膜組織から出血しやすいため、歯みがきや鼻をかむときは優しく行う。
  • ●出血時は安静にし、出血部位をタオルなどで圧迫して止血する。
  • ●出血が止まらない場合は、病院に連絡するようにする。

発現時期の目安
day7-28

貧血自覚症状でわかる
  • ●口唇・眼瞼粘膜などの蒼白
  • ●息切れ
  • ●めまい
  • ●頭痛
  • ●耳鳴り
  • ●貧血傾向が出現した場合には、初期対応として鉄剤の投与を考慮する。
  • ●Hb値<7g/dLを目安として赤血球輸血を検討する。
  • ●緩徐に進行した場合、自覚症状に乏しいので注意。
  • ●体力低下に応じた周辺環境の整備や動作の補助。
  • ●四肢の冷えに対する保温。

発現時期の目安
day21-

脱毛自覚症状でわかる
  • ●頭髪の脱毛
  • ●腋毛、陰毛、眉毛などの脱毛
確立された予防法はない。
  • ●脱毛から回復までの過程(時期・抜け方など)を説明。
  • ●見た目の脱毛量が減るため、治療前に頭髪をカット。
  • ●低刺激のシャンプーを使用して優しく洗髪。
  • ●脱毛した髪が飛び散るのを防ぐため帽子・バンダナを使用。
  • ●医療用ウィッグなどの購入(治療前に検討することが好ましい)。

発現時期の目安
day14-

末梢神経障害自覚症状でわかる
  • ●四肢のしびれ・痛み・筋力低下
  • ●腱反射減弱
確立した予防法・治療法はないが、下記の投与が試みられている。
  • ●メコバラミン
  • ●疼痛に対しては、アミトリプチリン、プレガバリンなど
  • ●少しでも症状に気づいたら、連絡する。
  • ●早期発見のため問診、ふらつきなどの動作支障の観察、VASなどの客観的評価を行う。
  • ●感覚障害(痺れや痛みの程度)と機能障害(ボタンを留めることができる、ペンで文字を書くといった機能の程度)の評価を行う。
  • ●患部のマッサージ・保温、手指の運動(症状が悪化する場合は、中止する)。
  • ●感覚低下のため、けが・転倒・熱傷などの対策。

発現時期の目安
day3-

※本サイトに掲載されている薬剤の詳細は各製品の電子添文をご参照ください。