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2024.06.05

ベンダムスチン単独療法

監修石巻赤十字病院 薬剤部 薬剤部長 西 和哉 先生

このレジメンの重要事項・ポイント等

Drからみたポイント

  • ○ベンダムスチン単剤療法の適応は、再発・難治性の低悪性度(Indolent)非ホジキンリンパ腫(NHL)とマントル細胞リンパ腫(MCL)である。
  • ○ベンダムスチン単剤 120mg/m2を1日1回1時間かけて投与。2日間連続点滴静注。
  • ○増悪がない場合、3週ごとに繰り返すが、血液毒性などを考慮し、治療間隔を4週ごとにする場合もある。
  • ○低悪性度B細胞性NHL、MCLの完全寛解率は65.5%(95%CI:51.9~77.5)、72.7%(39.0~94.0)である。

薬剤師からみたポイント

  • ○調製業務にあたり、揮発毒性を有する薬剤のため閉鎖式接続器具(CSTD)の使用等、曝露対策を講じたうえで調製を行う。
  • ○Grade4の好中球減少、血小板減少が認められた場合、次コースより90mg/m2へ減量し、それでも同様の毒性が認められた場合には60mg/m2へ減量。
  • ○中等度催吐性リスク(moderate emetic risk)薬剤であるため、5-HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾンの併用がガイドライン上推奨される。ただし、デキサメタゾン高用量投与により日和見感染を懸念する場合には、アプレピタントの使用も考慮する。
  • ○国内第2相試験でのGrade3/4の血液毒性は、白血球減少症65%、好中球減少症72%、血小板減少症16%、貧血6%であった。非血液毒性としては、嘔吐4%、感染症7%、食欲不振3%、静脈炎3%が報告されている。
  • ○リンパ球減少に伴う、日和見感染のリスクが増大するためアシクロビル及びST合剤の予防投与が推奨される(アシクロビルの使用は、帯状疱疹の発症抑制としての適応はないが、保険審査上認められる)
  • ○皮膚症状(発疹、中毒疹、水疱性皮疹など)がしばしば認められ、重症度に応じて副腎皮質ステロイド薬などの処置を必要とする。

看護師からみたポイント

  • ○調製後速やかに投与し、保存が必要な場合、室温では6時間以内、2~8℃保存では、24時間以内に投与を終了すること。
  • ○血管痛に対しては、刺入部位の温罨法や溶解液の調整が有効である。
  • ○炎症性抗がん剤(irritant drug)との海外報告があるため、穿刺部位の違和感や痛み等の訴えには注意を払うこと。

副作用の詳細

副作用の発現率

再発・難治性のMCLおよび低悪性度B-NHL患者を対象とした国内第Ⅱ相試験1)におけるベンダムスチン単独療法(n=69)のグレード3以上の有害事象は好中球減少72%、白血球減少症65%、血小板減少症16%、感染症7%、貧血6%、嘔吐4%、静脈炎3%などであった。

1) Ohmachi K, et al.: Cancer Sci. 2010; 101(9): 2059-64.

主な副作用有害事象共通用語基準

副作用名 主な症状 薬剤による対策 指導のポイント
悪心・嘔吐自覚症状でわかる
  • ●吐き気
  • ●嘔吐
  • ●食欲不振
  • ●中等度(催吐性)リスクに該当する。
  • ●5-HT3受容体拮抗薬+デキサメタゾン
  • ●デキサメタゾンを減量し、NK1受容体拮抗薬またはオランザピンの追加併用も考慮。
  • ●強い不安をもつ患者では催吐リスクが高いため、十分な支持療法とday2以降の内服方法の説明が必要。
  • ●3~4日以上の嘔吐の持続、1日以上食事が困難な場合は、医療機関に連絡するよう指導。
  • ●悪心・嘔吐時は食事を工夫(水分量が多く、喉ごしのよいものなど)し、食事がとれない場合でも水分をとるように指導する。
  • ●嘔吐後は、口腔内を清潔にするため、うがいをする。
  • ●軽い散歩などの気分転換。

発現時期の目安
day1-7

静脈炎自覚症状でわかる
  • ●点滴部位の痛み
  • ●点滴した血管に沿った痛み
  • ●静脈炎発症時に鎮痛薬を考慮する。
  • ●血管外漏出ではないことを確認。
  • ●血流の良い太い静脈を選択。
  • ●毎回、できるだけ穿刺部位を変更。
  • ●静脈炎が発現した場合は、次回投与時に別の血管を選択。
  • ●血管を拡張させるため、ホットパックなどで穿刺部位の血管を温める。

発現時期の目安
day1-2

好中球減少
リンパ球減少検査でわかる
  • ●易感染
    (自覚症状に乏しい)
  • ●好中球数1,000/μL未満で発熱、または好中球数500/μL未満になった時点でG-CSFを考慮。
  • ●発熱時:抗菌薬(レボフロキサシン500mg/日、シプロフロキサシン600mg/日など)
  • ●発熱性好中球減少症発症後は、患者のリスク因子に応じて、ペグフィルグラスチムの使用も検討する。
  • ●ウイルス感染が疑われる場合は、適切な検査と抗ウイルス薬の投与を行う。
  • ●自覚症状がないため、感染の予防・早期発見が重要。
  • ●悪寒・発熱時の対処法と医療機関に連絡するタイミングを確認。
  • ●手洗い、含嗽、歯磨きの励行。
  • ●シャワー浴などによる全身の清潔保持。
  • ●外出時はマスクを着用、人混みは避ける。
  • ●こまめに室内を清掃。

発現時期の目安
day10-21

皮疹自覚症状でわかる
  • ●皮疹
  • ●搔痒
  • ●重症度に応じて、外用・経口ステロイドを使用する。
  • ●重症の場合は、ベンダムスチンを休薬する。
  • ●保湿剤をこまめに塗布して、皮膚の保湿を維持。保湿剤は、すり込まずに押し当てるように塗布。
  • ●入浴・シャワー浴の際は、ぬるめのお湯、低刺激の洗浄剤でやさしく皮膚を洗浄。入浴後は、早めに保湿剤を塗布。
  • ●かゆみは、我慢せずに伝えるように指導する。

発現時期の目安
day1-

※本サイトに掲載されている薬剤の詳細は各製品の電子添文をご参照ください。