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2022.09.26

カルボプラチン+ペメトレキセド+ベバシズマブ療法

監修名古屋大学医学部附属病院 薬剤部 副薬剤部長 宮崎 雅之 先生

このレジメンの重要事項・ポイント等

Drからみたポイント

  • ○ドライバー遺伝子変異/転座陰性、PD-L1 TPS50%未満、75歳未満における非小細胞肺癌の1次化学療法は、プラチナ製剤と第三世代以降の細胞障害性抗がん薬の併用が推奨される。PEMは非扁平上皮癌への投与が推奨される1)
  • ○StageⅢもしくはⅣの非扁平上皮肺がんに対してCBDCA+PEM+BV療法は、CBDCA+PTX+BVに比べて無増悪生存期間が有意に延長(中央値:CBDCA+PEM+BV:6.0ヶ月、CBDCA+PTX+BV:5.6ヶ月)した。Grade3もしくは4の有害事象は、CBDCA+PEM+BV療法では血小板減少、貧血の頻度が高く、CBDCA+PTX+BV療法では、好中球減少の頻度が高かった2)
  • ○CBDCA+PEM+BV療法は非扁平上皮肺がんに対して、原則4コース(最大6コース)施行する。4コース施行にて増悪がなく、毒性も認容可能であればPEM+BV維持療法を実施する。
  • ○BVは喀血や塞栓のリスクを有する。喀血の既往を有する患者には禁忌である。

薬剤師からみたポイント

  • ○CBDCA+PEM+BV療法は、CBDCAの投与量がAUC≧4であるため、高度催吐性リスクに準じる。NK1受容体拮抗薬、5-HT3受容体拮抗薬、デキサメタゾンを使用した3剤併用の制吐療法を行うのが一般的である3)
  • ○PEMは、副作用軽減目的で葉酸とビタミンB12を補給する。自己判断でサプリメントとして葉酸を過剰に摂取すると治療に影響する可能性があるため、サプリメントの服用状況などを確認する
  • ○NSAIDsとの併用により、PEMの血中濃度が上昇し、毒性が強く出る可能性がある。併用時には、血小板減少、腎毒性の発現に注意する。
  • ○PEMの皮疹に対して投与前日から3日間、デキサメタゾン1回4mg、1日2回経口投与を考慮する。
  • ○BVは創傷治癒遅延による合併症が現れるおそれがあるため、投与前28日以内に出血を起こす手術および処置が行われていないか確認する。

看護師からみたポイント

  • ○CBDCA+PEM+BV療法は外来で行う場合があり、自宅で副作用を経験することが多い。
  • ○PEMは薬剤性肺障害が現れることがある。薬剤性肺障害の初期症状(発熱、空咳、息切れ)を伝え、症状があるときは早く受診するよう伝える。
  • ○BVは血圧が徐々に上昇する。自宅での連日血圧測定を指導する。
  • ○BVは鼻粘膜や歯肉などの粘膜の出血がみられることがある。10~15分経っても出血が止まらない場合は、連絡するよう伝える。
1)肺癌診療ガイドライン 2021年版,日本肺癌学会.
2)Patel JD, et al. : J Clin Oncol.2013; 31(34):4349-57.
3)制吐薬適正使用ガイドライン 第2版 一部改訂版 ver2.2.,日本癌治療学会.

副作用の詳細

副作用の発現率

未治療のⅢB期、Ⅳ期の非扁平上皮非小細胞肺癌を対象としたPointBreak試験1)におけるカルボプラチン+ペメトレキセド+ベバシズマブ療法(n=442)のグレード3以上の有害事象は、好中球減少25.8%、血小板減少23.3%、貧血14.5%、疲労10.9%などであった。

1)Patel JD, et al.: J Clin Oncol. 2013;31(34):4349-57.

主な副作用有害事象共通用語基準

副作用名 主な症状 薬剤による対策 指導のポイント
悪心・嘔吐自覚症状でわかる
  • ●吐き気
  • ●嘔吐
  • ●食欲不振
  • ●高度(催吐性)リスクに該当し、下記薬剤による制吐療法が推奨される。
  • ●アプレピタント+5-HT3受容体拮抗薬(グラニセトロン、パロノセトロン)+デキサメタゾン
  • ●予期性の不安による悪心・嘔吐がありそうな場合は、投与前日眠前や投与日朝にアルプラゾラムなどを使用する。
  • ●若年、女性、飲酒歴なし、乗り物酔い、妊娠悪阻の有無など患者側の因子にも注目した対応が必要となる。
  • ●強い不安をもつ患者では催吐リスクが高いため、十分な支持療法とday2以降の内服方法の説明が必要。
  • ●3~4日以上の嘔吐の持続、1日以上食事が困難な場合は、医療機関に連絡するよう指導。
  • ●悪心・嘔吐時は食事を工夫(水分量が多く、喉ごしのよいものなど)し、食事がとれない場合でも水分をとるように指導する。
  • ●嘔吐後は、口腔内を清潔にするため、うがいをする。
  • ●軽い散歩などの気分転換。

発現時期の目安
day 1-7

好中球減少検査でわかる
  • ●易感染
    (自覚症状に乏しい)
  • ●好中球数1,000/μL未満で発熱、または好中球数500/μL未満になった時点でG-CSFを考慮。
  • ●発熱時:抗菌薬(レボフロキサシン500mg/日、シプロフロキサシン600mg/日など)
  • ●発熱性好中球減少症発症後は、患者のリスク因子に応じて、ペグフィルグラスチムの使用も検討する。
  • ●自覚症状がないため、感染の予防・早期発見が重要。
  • ●悪寒・発熱時の対処法と医療機関に連絡するタイミングを確認。
  • ●手洗い、含嗽、歯磨きの励行。
  • ●シャワー浴などによる全身の清潔保持。
  • ●外出時はマスクを着用、人混みは避ける。
  • ●こまめに室内を清掃。

発現時期の目安
day14-21

血小板減少検査でわかる
  • ●皮下出血
  • ●粘膜組織からの易出血
  • ●血小板数だけでなく、出血症状、合併症、侵襲的処置の有無等を総合的に考慮して、血小板輸血を検討する。
  • ●歯ぐきや鼻粘膜などの粘膜組織から出血しやすいため、歯みがきや鼻をかむときは優しく行う。
  • ●出血時は安静にし、出血部位をタオルなどで圧迫して止血する。
  • ●出血が止まらない場合は、病院に連絡するようにする。

発現時期の目安
day14-21

皮疹自覚症状でわかる
  • ●発疹、落屑
  • ●皮疹の治療に対して、推奨される特別な方法はない。皮疹の多くは掻痒性発疹で、抗ヒスタミン薬とデキサメタゾンの投与で予防あるいは改善できるとされている。米国の添付文書では、ペメトレキセド投与前日から投与翌日までの3日間、デキサメタゾンを1回4mg、1日2回経口投与することが記載されている。
  • ●発熱を伴う粘膜炎、皮疹が急激に悪化するようであればスティーブンス-ジョンソン症候群(SJS)や中毒性表皮壊死症(TEN)などの可能性があるため、早期の受診を勧めるように指導する。

発現時期の目安
day1-21

脱毛自覚症状でわかる
  • ●頭髪の脱毛
  • ●腋毛、陰毛、眉毛などの脱毛
  • ●確立された予防法はない。
  • ●脱毛から回復までの過程(時期・抜け方など)を説明。
  • ●見た目の脱毛量が減るため、治療前に頭髪をカット。
  • ●頭皮を清潔に保つために低刺激のシャンプーを使用して優しく洗髪する。
  • ●脱毛した髪が飛び散るのを防ぐため帽子・バンダナを使用。
  • ●パーマやカラーリングは、治療が終わるまで控える。
  • ●かつらなどの購入(治療前に検討することが好ましい)。

発現時期の目安
day14-

高血圧自覚症状でわかる
  • ●高血圧
  • ●降圧薬(ACE阻害薬、ARB、Ca拮抗薬など)
  • ●毎日、血圧を測る。
  • ●医療機関に連絡する血圧値を伝えておく。

発現時期の目安
day1-

出血自覚症状でわかる
  • ●鼻血、歯肉出血などの粘膜出血
  • ●薬剤による予防法はない。
  • ●軽度の出血は、自然に、または軽く圧迫することで止血することを伝える。出血が止まらない場合は、医療機関に連絡をする。
  • ●歯磨きは、柔らかい歯ブラシで、やさしく行う。
  • ●歯科を受診する際は、ベバシズマブの投与を受けていることを伝える。

発現時期の目安
day1-

尿蛋白自覚症状でわかる
  • ●尿の泡立ちの増加
  • ●浮腫
  • ●体重増加
  • ●Grade 2以上の場合は、1以下になるまで休薬する。グレード4の場合は、中止する。
  • ●ネフローゼ症候群を疑う症状があらわれた場合は、次の診察を待たずに、すぐに医療機関に連絡する。

発現時期の目安
day1-

※本サイトに掲載されている薬剤の詳細は各製品の電子添文をご参照ください。