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2023.09.12

カルボプラチン+ペメトレキセド療法

監修北里大学病院 薬剤部 係長 稲野 寛 先生

このレジメンの重要事項・ポイント等

Drからみたポイント

  • ○カルボプラチン+ペメトレキセドは他剤との相性がよく、EGFR遺伝子変異陽性の一次治療(exon19欠失 or L858R変異陽性例)ではゲフィチニブ1)と、PS 0-1、PD-L1 TPS 50%以上に対する一次治療において薬物療法ではペムブロリズマブ2)とさらにPD-L1 TPS 1~49% or 1%未満に対する一次治療においてもニボルマブ+イピリムマブとの併用が選択肢に挙がる。
  • ○PS不良例に対しても忍容性があり、PS 2では単剤療法が推奨される中、骨髄抑制等の副作用が許容できるのであれば、選択肢に挙がる3)
  • ○高齢者に対しても忍容性があり、75歳以上、PS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌(非扁平上皮癌)患者を対象とした第Ⅲ相試験(JCOG1210/WJOG7813L試験)においてもドセタキセル単剤療法群に対するOSの非劣性が証明されている。

薬剤師からみたポイント

  • ○忍容性が高いレジメンである一方、副作用管理をいかに行うかが治療継続できるかの鍵である。
  • ○カルボプラチンの用量はAUC≧4を超えるため、高度催吐リスクに準じた予防的制吐療法が推奨される。現在は長時間型のNK1受容体拮抗薬やMARTAのオランザピンなど選択肢が増えているため患者特性に応じた治療が重要である。
  • ○カルボプラチンは、Calvert式Dose(mg)=target AUC×(GFR+25)で算出されるがFDAの提示したGFR上限値125mL/minを超えないように注意する。すなわちAUC=6での最大投与量は900mgである。
  • ○ペメトレキセドの副作用軽減のためホモシステイン、メチルマロン酸濃度を下げる目的で葉酸及びビタミンB12が使用される。特に葉酸は指定のある0.5mg/日がペメトレキセドの効果を下げずに副作用を軽減するとされているため、安易なサプリメントの摂取は避けるように促す。(臨床試験では0.35mg-1mgが使用されていた4)。)
  • ○予防的制吐療法で用いるデキサメタゾンはday3程度まで継続する場合があるが、嘔気がない場合でも皮疹予防目的も兼ねていることから、安易に中止する事は推奨されない。
  • ○ペメトレキセドは主として腎より排泄され、クレアチニン・クレアランスが45mL/min未満の患者についての十分なデータはない。特にNSAIDs(イブプロフェン)とは相互作用の観点からも併用する場合は注意が必要である5)

看護師からみたポイント

  • ○カルボプラチンによるアレルギーは投与回数を重なることで頻度が多くなる。特に8コース目以降では、患者自身の気づきを促す意味でも違和感を感じた際の対応などしっかりと指導しておく必要がある。
  • ○脱毛は必発ではないが、予防法は確立されていない。あらかじめ髪の毛を短く切る、医療用ウィッグを用意するなどの対策をとることで心の準備が行えるように促す6)。また髪質変化や縮毛などの症状、まつげや体毛などへの影響もでる場合もあるため、部位に応じたケアを心がける。
1) Noronha V, et al.: J Clin Oncol. 2020; 38(2): 124-36.
2) Gandhi L, et al.: N Engl J Med. 2018; 378(22): 2078-92.
3) Zukin M, et al.: J Clin Oncol. 2013; 31(23): 2849-53.
4) Vogelzang, N. J. et al.: J. Clin. Oncol. 2003; 21(14): 2636-44
5) Sweeney, C.J. et al.: Clin Cancer Res. 2006; 12(2): 536-42
6) がん治療のためのアピアランスケア2021年版 第2版, 金原出版

副作用の詳細

副作用の発現率

ⅢB期、Ⅳ期の非扁平上皮非小細胞肺癌を対象とした海外第Ⅲ相試験1)におけるカルボプラチン+ペメトレキセド療法(n=106)のグレード3以上の有害事象は、好中球減少33.0%、白血球減少16.0%、貧血12.3%、血小板減少9.4%などであった。

1) Rodrigues-Pereira J, et al.: J Thorac Oncol. 2011; 6(11): 1907-14.

主な副作用有害事象共通用語基準

副作用名 主な症状 薬剤による対策 指導のポイント
悪心・嘔吐自覚症状でわかる
  • ●吐き気
  • ●嘔吐
  • ●食欲不振
  • ●高度(催吐性)リスクに該当し、下記薬剤による制吐療法が推奨される。
  • ●ホスネツピタント、アプレピタントまたはホスアプレピタント+5-HT3受容体拮抗薬(グラニセトロン、パロノセトロン)+デキサメタゾン。
  • ●嘔気のパターンで使用する薬剤を考慮する。
  • ●若年、女性、飲酒歴なし、乗り物酔い、妊娠悪阻の有無など患者側の因子にも注目した対応が必要となる。
  • ●強い不安をもつ患者では催吐リスクが高いため、十分な支持療法とday2以降の内服方法の説明が必要。
  • ●3~4日以上の嘔吐の持続、1日以上食事が困難な場合は、医療機関に連絡するよう指導。
  • ●悪心・嘔吐時は食事を工夫(水分量が多く、喉ごしのよいものなど)し、食事がとれない場合でも水分をとるように指導する。
  • ●嘔吐後は、口腔内を清潔にするため、うがいをする。
  • ●軽い散歩などの気分転換。

発現時期の目安
day1-7

好中球減少検査でわかる
  • ●易感染
    (自覚症状に乏しい)
  • ●好中球数1,000/μL未満で発熱、または好中球数500/μL未満になった時点でG-CSFを考慮。
  • ●発熱時:抗菌薬(レボフロキサシン500mg/日、シプロフロキサシン600mg/日など)。
  • ●発熱性好中球減少症発症後は、患者のリスク因子に応じて、ペグフィルグラスチムの使用も検討する。
  • ●自覚症状がほとんどないため、Nadir時期は手洗い、うがい、マスク着用などの基本的な感染対策を励行するように指導。
  • ●悪寒・発熱時の対処法と医療機関に連絡するタイミングを確認。
  • ●手洗い、含嗽、歯磨きの励行。
  • ●シャワー浴などによる全身の清潔保持。
  • ●外出時はマスクを着用、人混みは避ける。
  • ●こまめに室内を清掃。

発現時期の目安
day7-14

血小板減少検査でわかる
  • ●皮下出血
  • ●粘膜組織からの易出血
  • ●血小板数だけでなく、出血症状、合併症、侵襲的処置の有無等を総合的に考慮して、血小板輸血を検討する。
  • ●歯ぐきや鼻粘膜などの粘膜組織から出血しやすいため、歯みがきや鼻をかむときは優しく行う。
  • ●出血時は安静にし、出血部位をタオルなどで圧迫して止血する。
  • ●出血が止まらない場合は、病院に連絡するようにする。

発現時期の目安
day7-14

皮膚障害自覚症状でわかる
  • ●発疹、落屑
  • ●確立した予防法・治療法はないが、下記の外用薬・内服薬が用いられる。
    ・ 保湿剤(尿素軟膏、ヘパリン類似物質含有軟膏、ビタミンA含有軟膏など。アルコールを含まない低刺激性のものを選択)
    ・ ステロイド外用剤(部位や症状の程度によってステロイドランクや塗布量を選択)
    ・ 経口抗ヒスタミン薬
    ・ 経口ステロイド薬
  • ●嘔気対策で使用されるデキサメタゾンにより、頻度は減ってきている。乾燥による掻痒感を防ぐ目的で日々の保湿ケアの徹底を促す。
  • ●保湿剤をこまめに塗布して、皮膚の保湿を維持。保湿剤は、すり込まずに押し当てるように塗布。
  • ●入浴・シャワー浴の際は、ぬるめのお湯、低刺激の洗浄剤でやさしく皮膚を洗浄。入浴後は、早めに保湿剤を塗布。
  • ●紫外線吸収剤を含まない日焼け止め(紫外線散乱剤のみ含有)などを使用して紫外線を避ける。

発現時期の目安
day1-21

脱毛自覚症状でわかる
  • ●頭髪の脱毛
  • ●腋毛、陰毛、眉毛などの脱毛
  • ●確立された予防法はない。
  • ●脱毛から回復までの過程(時期・抜け方など)を説明。
  • ●見た目の脱毛量が減るため、治療前に頭髪をカット。
  • ●頭皮を清潔に保つために低刺激のシャンプーを使用して優しく洗髪する。
  • ●脱毛した髪が飛び散るのを防ぐため帽子・バンダナを使用。
  • ●パーマやカラーリングは、治療が終わるまで控える。
  • ●かつらなどの購入(治療前に検討することが好ましい)。

発現時期の目安
day14-

※本サイトに掲載されている薬剤の詳細は各製品の電子添文をご参照ください。