2023.01.24
カルボプラチン+ペメトレキセド+ペムブロリズマブ療法
湘南医療大学薬学部 がん専門薬剤師 佐藤 淳也 先生
- ○EGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子のないTPS 50%以上のPS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌患者を対象として、ペムブロリズマブ単剤療法とシスプラチンあるいはカルボプラチンのプラチナ製剤併用療法を比較する第Ⅲ相試験(KEYNOTE-024試験)が行われている1)。無増悪生存期間(PFS)は、HR=0.50(Cox比例ハザードモデル)(10.3カ月 vs 6.0カ月, p<0.001, 層別log-rank検定)であり、さらに全生存期間(OS)においても、HR=0.63(Cox比例ハザードモデル)(30.0カ月 vs 14.2カ月, p=0.002, 層別log-rank検定)であったことから、ペムブロリズマブ単剤療法は、ペメトレキセドを含むプラチナ製剤併用療法に対して有用であることが確認されている。
- ○ペムブロリズマブとプラチナ製剤併用療法の第Ⅲ相試験(KEYNOTE-189試験)のPFSおよびOSは、それぞれHR=0.52(Cox比例ハザードモデル)(8.8カ月 vs 4.9カ月, p<0.0001, 層別log-rank検定)、HR=0.49(Cox比例ハザードモデル)(未到達 vs 11.3カ月, p<0.0001, 層別log-rank検定)であり、シスプラチン+ペメトレキセド療法やカルボプラチン+ペメトレキセド療法に対するペムブロリズマブの上乗せはPFSとOSを有意に延長する証拠がある2)。
- ○患者報告アウトカム(PRO)の解析も行われ、ペムブロリズマブ併用療法群がプラチナ製剤併用療法群に比べてQOLを維持させることも報告されている3)。
- ○本レジメンの注意点として、PS 2症例での臨床成績および安全性は不明である。PS 2症例は細胞傷害性抗癌薬の毒性も懸念される患者群でもあり、さらに免疫チェックポイント阻害薬を併用投与することについては安全性における懸念もある。
- ○カルボプラチンの投与量は、カルバート式(カルボプラチン投与量(mg)=AUC×(GFR+25))に基づいて算出する。
カルバート式に用いるGFR(糸球体ろ過量)は、次の3つの方法がある。GFRは、クレアチニンクリアランス(CLcr)で代用できる。
①コッククロフト式による算出:CLcr(女性は×0.85)=(140-年齢)×体重÷72×SCr(血清クレアチニン)
②24時間蓄尿による算出:CLcr=尿中Cr濃度×1分尿量(24hr尿量÷1440分)÷SCr
③日本人のGFR推算式(eGFR)による算出:GFR(男)=194×Scr-1.094×年齢-0.287
GFR(女)=GFR(男)×0.739 - ○腎機能に応じたカルボプラチンの投与量が次の上限量を超えた場合、次の通りキャッピングを行う。AUC 6の場合;900mg、AUC 5の場合;750mg、AUC 4の場合;600mgまでとする。
- ○ペメトレキセドは、メトトレキサートに類した葉酸代謝拮抗薬であるので、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)など腎毒性を持つ薬剤との併用は注意する。
- ○ペメトレキセドの重篤な毒性は、葉酸とビタミンB12プールの減少に関係している4)。現在のレジメンではこれらの補充療法が標準的に行われている。葉酸とVB12補充をしないペメトレキセド+シスプラチン療法では、グレード3以上の好中球減少や発熱性好中球減少症がそれぞれ34%および9%に発生し、補充を行った15%や0.6%に比べ多かった5)。
- ○葉酸は、投与の7日以上前から1日1回0.5mgを連日経口投与する。ペメトレキセドの投与を中止又は終了する場合には、ペメトレキセド最終投与から22日間続ける。ビタミンB12は、初回投与の少なくとも7日前にビタミンB12として1回1mgを筋肉内投与する。VB12の経口投与は推奨されない6)。ただし、最初のVB12投与をペメトレキセド導入時間を24~48時間に短縮できる可能性が報告されている7)。
- ○ペンブロリズマブ投与中は、免疫関連有害事象(irAE)の発現を注意深く観察する。比較的頻度が高い内分泌障害(甲状腺機能障害)の検査は、肝腎機能などのルーチン血液検査に定期的に追加しておく。
- ○免疫関連有害事象(irAE)の副作用は、倦怠感など疾患のためと許容して発見が遅れることがあるので注意する。例えば、カルボプラチン、ペメトレキセドに由来する貧血とirAEとしての甲状腺機能障害や肝機能障害は、ともに倦怠感として認識される可能性がある。
- ○同様に肺癌の進行とペメトレキセドの間質性肺炎、irAEとしての肺障害は、呼吸障害として重複する可能性がある。
- ○重症糖尿病は、消化器症状や倦怠感など感冒様症状に類似していることがあり、免疫チェックポイント阻害薬投与時の体調不良は、化学療法を受けている専門施設に受診が望ましい。
- ○irAEの好発時期は、幅が広いので投与終了後も観察が必要である。
1) Reck M, et al.: N Engl J Med. 2016; 375(19): 1823-33.
2) Gandhi L, et al.: N Engl J Med. 2018; 378(22): 2078-92.
3) Garassino MC, et al.: Lancet Oncol. 2020; 21(3): 387-97.
4) Niyikiza C, et al.: Mol Cancer Ther. 2002; 1(7): 545-52.
5) Vogelzang NJ, et al.: J Clin Oncol. 2003; 21(14): 2636-44.
6) Takagi Y, et al.: Cancer Chemother Pharmacol. 2016; 77(3): 559-64.
7) Takagi Y, et al.: Oncologist. 2014; 19(11): 1194-9.
2) Gandhi L, et al.: N Engl J Med. 2018; 378(22): 2078-92.
3) Garassino MC, et al.: Lancet Oncol. 2020; 21(3): 387-97.
4) Niyikiza C, et al.: Mol Cancer Ther. 2002; 1(7): 545-52.
5) Vogelzang NJ, et al.: J Clin Oncol. 2003; 21(14): 2636-44.
6) Takagi Y, et al.: Cancer Chemother Pharmacol. 2016; 77(3): 559-64.
7) Takagi Y, et al.: Oncologist. 2014; 19(11): 1194-9.
進行・再発の非扁平上皮非小細胞肺癌患者を対象としたKEYNOTE-189試験1)におけるプラチナ製剤(シスプラチンまたはカルボプラチン)+ペメトレキセド+ペムブロリズマブ療法(n=405)のグレード3以上の有害事象は、貧血16.3%、好中球減少15.8%、血小板減少7.9%、無力症6.2%、疲労5.7%、下痢5.2%などであった。免疫関連有害事象(irAE)は、ペムブロリズマブ併用群405例中92例(22.7%)に発生した。このうちグレード3以上の事象は36例(8.9%)であり、肺炎2.7%の他、皮膚障害が2%、腎炎1.5%であった。3例がirAEにて死亡に至った。
1) Gandhi L, et al.: N Engl J Med. 2018; 378(22): 2078-92.
※重篤、頻度の高いものは表内項目をピンク色で示しております。
副作用名 | 主な症状 | 薬剤による対策 | 指導のポイント |
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infusion reaction |
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発現時期の目安 |
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悪心・嘔吐 |
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発現時期の目安 |
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好中球減少 |
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発現時期の目安 |
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血小板減少 |
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発現時期の目安 |
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皮膚障害 |
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発現時期の目安 |
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脱毛 |
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発現時期の目安 |
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大腸炎・下痢 |
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発現時期の目安 |
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間質性肺炎 |
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発現時期の目安 |
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肝機能障害 |
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発現時期の目安 |
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内分泌障害 |
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発現時期の目安 |
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1 型糖尿病 |
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発現時期の目安 |
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筋炎 |
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発現時期の目安 |
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ギラン・ バレー症候群等 |
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発現時期の目安 |
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重症筋無力症 |
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発現時期の目安 |
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心筋炎 |
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発現時期の目安 |
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ぶどう膜炎 |
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発現時期の目安 |
※本サイトに掲載されている薬剤の詳細は各製品の電子添文をご参照ください。