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2024.04.03

シスプラチン+ビノレルビン療法

監修前橋赤十字病院 薬剤部 品川 理加 先生
適応 非小細胞肺癌における術後補助化学療法、切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
投与の詳細 −(術後補助化学療法 4コース、進行・再発 6コース以内実施)

本レジメンについて

  • ●Ⅱ期-ⅢA期の術後補助療法として推奨されている治療法である。
    ・ステージⅠB-ⅢAの非小細胞肺癌を対象に術後補助療法としてシスプラチン+ビノレルビン療法と手術単独を比較したANITA試験1)において、生存期間中央値はシスプラチン+ビノレルビン療法群 65.7ヵ月(95%信頼区間 47.9-88.5)、手術単独群43.7ヵ月(同 35.7-52.3)であり、有意な死亡リスクの低下が報告されている(ハザード比0.80、95%信頼区間 0.66-0.96、p=0.017、層別log-rank検定)。
    ・ステージⅠB-Ⅱの非小細胞肺癌を対象に術後補助療法としてシスプラチン+ビノレルビン療法と手術単独を比較したJBR.10試験2)において、5年生存率はシスプラチン+ビノレルビン療法群67%、手術単独群56%であり、有意な生存期間の延長が報告されている(ハザード比 0.78、95%信頼区間 0.61-0.99、p=0.04、層別log-rank検定)。
    ・なお、上記2試験で用いられている治療スケジュールは、本邦とは異なる。
  • ●ドライバー遺伝子変異/転座陰性、PD-L1 TPS 50%未満、もしくは不明のPS 0-1、75歳未満に対する一次治療において推奨されているプラチナ製剤+第三世代以降の細胞傷害性抗癌薬併用療法の1つである。
    ・4種類の併用療法(プラチナ製剤+第三世代細胞傷害性抗癌薬)を比較したFACS試験3)において、主要評価項目である1年生存率はシスプラチン+イリノテカン群(対照群)59.2%、カルボプラチン+パクリタキセル群51.0%(対照群との差-8.2%、95%信頼区間-19.6%-3.3%)、シスプラチン+ゲムシタビン群59.6%(対照群との差0.4%、95%信頼区間-10.9%-11.7%)、シスプラチン+ビノレルビン群48.3%(対照群との差-10.9%、95%信頼区間-22.3%-0.5%)であり、いずれの治療効果も同等であった(非劣性マージン-10%)。
1) Douillard JT, et al.: Lancet Oncol. 2006; 7(9): 719-27.
2) Butts CA , et al.: J Clin Oncol. 2010; 28(1): 29-34.
3) Ohe Y, et al.: Ann Oncol. 2007; 18(2): 317-23.

副作用の特徴

  • ●高度催吐性リスクに分類されるため、適切な制吐療法を実施する。
  • ●シスプラチン投与時は、大量輸液とともにHydrationによって腎保護を行う。
  • ●シスプラチンによる聴力障害は長期に残存することがあるため、注意を要する。
  • ●骨髄抑制が比較的強く、白血球減少、好中球減少、ヘモグロビン減少に注意する。
  • ●ビノレルビンは壊死性抗がん薬(vesicant drug)に分類されており、血管外漏出に注意するのはもちろん、静脈炎の頻度も高い。そのため10分以内の投与終了、投与後の生食でのフラッシュが静脈炎予防に重要である。
【副作用の出やすい時期と相対的頻度のイメージ図】

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