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2024.01.25

CHOP療法・R-CHOP療法

監修広島赤十字・原爆病院 薬剤部 坂本 健一 先生

このレジメンの重要事項・ポイント等

Drからみたポイント

  • ○DLBCLでは限局期・進行期、Bulky massの有無などによって投与コース数や放射線治療の有無が異なる1)
  • ○CHOP療法等アントラサイクリン系薬を使用する際は、過去の投与歴の確認や心機能の評価を必ず行う。
  • ○耐糖能異常がある場合は専門診療科と連携して治療を進める。
  • ○併存疾患のある高齢者についてはG-CSFの一次予防投与を考慮する。また前コースでFNを生じ、投与量、スケジュールを変更しない場合、二次予防投与を考慮する2)

薬剤師からみたポイント

  • ○ドキソルビシン累積投与量の確認において、乳がん・肉腫等の造血器腫瘍以外の疾患に対するアントラサイクリン系薬使用歴の見落としに注意する。
  • ○発熱時の抗菌薬など必要時に内服する薬剤が数種類処方される場合、内服方法とともに病院への連絡方法を理解できているか確認しておく。
  • ○リツキシマブのInfusion reaction対策として前投与する薬剤について、患者へ十分に説明する。また、看護師が使用目的や与薬タイミングを認識しやすい環境づくりも必要。
  • ○リツキシマブの90分間投与はB細胞性非ホジキンリンパ腫であることに加えて、直近の投与での副作用が軽微であるなど複数の条件があるため、問題がないことを毎回確認する。また、初めて90分間投与となるタイミングでは患者および看護師と情報を共有しておくことが望ましい。
  • ○B型肝炎ウイルス再活性化の予防にはスクリーニングとともに、継続したモニタリングが必要となる。検査を要する患者を検出するシステムの活用や、多職種での確認体制が望まれる。
  • ○血管外漏出の対応として自施設でのデキスラゾキサンの供給体制を把握しておく。

看護師からみたポイント

  • ○リツキシマブのInfusion reactionについて初期症状の患者への説明、定期的な症状観察と投与速度管理などの手順をマニュアル化して手順を統一しておく。
  • ○ドキソルビシン(壊死起因性抗がん薬)における血管外漏出に特に注意する。
  • ○血管外漏出の初期症状(疼痛、熱感等)、トイレなど移動する際の注意点を十分に説明する。
  • ○デキスラゾキサンを使用する際の手順について医師・薬剤師と情報共有する。
    副作用とその対処法(インフォメーションモデル) | 東和薬品「抗がん剤ナビ」 (towa-oncology.jp)
1) 造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版. 第3版, 金原出版
2) G-CSF適正使用ガイドライン 2022年10月改訂. 第2版, 金原出版

副作用の詳細

副作用の発現率

<CHOP療法>

Bulky Ⅱ/Ⅲ/Ⅳ期の初発非ホジキンリンパ腫患者を対象とした無作為化比較試験1)におけるCHOP療法(n=225)のグレード4の有害事象は31%、グレード5(死亡)は1%であった。

1) Fisher RI, et al.: N Engl J Med. 1993; 328(14): 1002-6.

<R-CHOP療法>

Ⅱ-Ⅳ期の初発DLBCL患者を対象とした無作為化比較試験2)におけるR-CHOP療法(n=202)のグレード3以上の有害事象は脱毛39%、感染12%、心毒性、肺毒性各8%、神経毒性5%、悪心・嘔吐4%、粘膜炎、肝毒性各3%などであった。

2) Coiffier B, et al.: N Engl J Med. 2002; 346(4): 235-42.

主な副作用有害事象共通用語基準

副作用名 主な症状 薬剤による対策 指導のポイント
infusion
reaction自覚症状でわかる
  • ●掻痒感、蕁麻疹
  • ●顔面浮腫、顔面紅潮
  • ●しびれ
  • ●脱力感
  • ●口腔内・咽頭不快感
  • ●咳、くしゃみ
  • ●動悸、頻脈、悪心
  • ●リツキシマブの投与開始30分前に抗ヒスタミン剤、解熱鎮痛剤等の前投与を行う。
  • ●電子添文に従った投与速度で投与する。
  • ●発現時は投与速度を下げるか、投与を中止する。
  • ●症状に応じて、解熱鎮痛薬、抗ヒスタミン薬、ステロイド、アドレナリン投与などを投与する。
  • ●回復後は投与再開が可能だが、投与中止時の点滴速度の半分以下で再開する。
  • ●少しでも何か異常を感じたら、すぐにスタッフに伝えるように指導する。

発現時期の目安
day1

悪心・嘔吐自覚症状でわかる
  • ●吐き気
  • ●嘔吐
  • ●食欲不振
  • ●高度(催吐性)リスクに該当し、下記薬剤による制吐療法が推奨される。
  • ●アプレピタント+5-HT3受容体拮抗薬(グラニセトロン、パロノセトロン)±デキサメタゾン±オランザピン
    ※レジメンにプレドニゾロンが含まれるため、デキサメタゾンは投与しなくてもよい
    ※オランザピンは、糖尿病や糖尿病の既往のある患者には禁忌
  • ●予期性の不安による悪心・嘔吐がありそうな場合は、投与前日眠前や投与日朝にアルプラゾラムなどを使用する。
  • ●若年、女性、飲酒歴なし、乗り物酔い、妊娠悪阻の有無など患者側の因子にも注目した対応が必要となる。
  • ●強い不安をもつ患者では催吐リスクが高いため、十分な支持療法とday2以降の内服方法の説明が必要。
  • ●3~4日以上の嘔吐の持続、1日以上食事が困難な場合は、医療機関に連絡するよう指導。
  • ●悪心・嘔吐時は食事を工夫(水分量が多く、喉ごしのよいものなど)し、食事がとれない場合でも水分をとるように指導する。
  • ●嘔吐後は、口腔内を清潔にするため、うがいをする。
  • ●軽い散歩などの気分転換。

発現時期の目安
day1-7

高血糖検査でわかる
  • ●血糖値上昇
  • ●通常、インスリンで血糖コントロールを図る。
  • ●糖尿病合併患者では、糖尿病専門医と血糖コントロールについて確認する。
  • ●プレドニゾロン投与日の午後~夕方は高血糖になるが、翌朝は正常値となりやすいため、血糖値測定のタイミングを指導する。
  • ●糖尿病合併患者では、シックデイの対処法を確認する。

発現時期の目安
day1-7

便秘自覚症状でわかる
  • ●排便回数の減少
  • ●排便困難
  • ●残便感
  • ●弛緩性便秘の場合:副交感神経刺激薬(ネオスチグミンなど)
  • ●硬便の場合:浸透圧性緩下薬(酸化マグネシウムなど)、膨張性下薬(カルメロースNa など)
  • ●腸蠕動低下の場合:大腸刺激性下薬(センノシドなど)、小腸刺激性下薬(加香ヒマシ油など)
  • ●直腸便貯留の場合:坐薬(炭酸Na/リン酸Na など)、浣腸下剤(50%グリセリンなど)投与後は、排便の性状などを確認しながら、投与量を調節。
  • ●排便回数、性状、量の記録。
  • ●水分摂取(温かい飲み物を少量ずつ)。
  • ●食物線維の多い食事(腸閉塞の既往がある場合は勧めない)。
  • ●適度な運動。
  • ●イレウスの発現に注意。

発現時期の目安
day1-7

好中球減少検査でわかる
  • ●易感染
    (自覚症状に乏しい)
  • ●好中球数1,000/μL未満で発熱、または好中球数500/μL未満になった時点でG-CSFを考慮。
  • ●発熱時:抗菌薬(レボフロキサシン500mg/日、シプロフロキサシン600mg/日など)
  • ●発熱性好中球減少症発症後は、患者のリスク因子に応じて、ペグフィルグラスチムの使用も検討する。
  • ●自覚症状がないため、感染の予防・早期発見が重要。
  • ●悪寒・発熱時の対処法と医療機関に連絡するタイミングを確認。
  • ●手洗い、含嗽、歯磨きの励行。
  • ●シャワー浴などによる全身の清潔保持。
  • ●外出時はマスクを着用、人混みは避ける。
  • ●こまめに室内を清掃。

発現時期の目安
day10-21

末梢神経障害自覚症状でわかる
  • ●四肢のしびれ・痛み・筋力低下
  • ●腱反射減弱
  • ●確立した予防法・治療法はないが、下記の投与が試みられている。
    ・ビタミンB群
    ・疼痛に対しては、三環系抗うつ薬(アミトリプチリンなど)、プレカバリン、ミロガバリン、オピオイドなど
    ・漢方薬(牛車腎気丸など)
  • ●少しでも症状に気づいたら、連絡するように指導。
  • ●早期発見のため問診、ふらつきなどの動作支障の観察、VAS などの客観的評価を行 う。
  • ●感覚障害(痺れや痛みの程度)と機能障害(ボタンを留めることができる、ペンで文 字を書くといった機能の程度)の評価を行 う。
  • ●患部のマッサージ・保温、手指の運動(症状が悪化する場合は、中止する)。
  • ●感覚低下のため、けが・転倒・熱傷などの対策。

発現時期の目安
day14-

脱毛自覚症状でわかる
  • ●頭髪の脱毛
  • ●腋毛、陰毛、眉毛などの脱毛
    ●確立された予防法はない。
  • ●脱毛から回復までの過程(時期・抜け方など)を説明。
  • ●見た目の脱毛量が減るため、治療前に頭髪をカット。
  • ●頭皮を清潔に保つために低刺激のシャンプーを使用して優しく洗髪する。
  • ●脱毛した髪が飛び散るのを防ぐため帽子・バンダナを使用。
  • ●パーマやカラーリングは、治療が終わるまで控える。
  • ●かつらなどの購入(治療前に検討することが好ましい)。

発現時期の目安
day14-

※本サイトに掲載されている薬剤の詳細は各製品の電子添文をご参照ください。