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2025.07.24

DLd療法

監修地方独立行政法人神戸市民病院機構 神戸市立医療センター中央市民病院 薬剤部 𠮷田 早希 先生

このレジメンの重要事項・ポイント等

Drからみたポイント

  • ○移植非適応の未治療多発性骨髄腫や大量化学療法後の再発に対する治療の選択肢となる。
  • ○皮疹、発熱、消化器症状、倦怠感、骨髄抑制などの副作用は生じうるが、平均的に忍容性が高い治療である。
  • ○皮下注射製剤を使用するレジメンの場合は点滴不要であり、問題なく進めば月1回の投与が可能となり患者自身も通院付き添いの方にも負担が少ない治療法である。
  • ○血液毒性(好中球減少、血小板減少など)や非血液毒性(末梢性ニューロパチーなど)を認める場合は、電子添文や適正使用ガイド等の投与基準を参考にレナリドミドの減量または中止を考慮する。

薬剤師からみたポイント

  • ○レナリドミドは高脂肪食摂取後の服用によってAUC及びCmaxの低下が認められている。
  • ○レナリドミドは腎排泄型の抗がん薬のため、腎機能による減量が必要である。疾患背景として腎機能が低下していることが多いため注意深く監査し、30≦CCr<60mL/minの中等度腎機能低下患者の場合は2コース終了後忍容可能な場合には15mg/日に増量可能となることに留意する。
  • ○レナリドミドの服用を忘れた場合、通常の服用時刻から12時間以上経過しているときは服用せず、次回内服分から再開するように指導する。
  • ○適正管理手順に沿ってレナリドミドの催奇形性について説明し、患者区分に応じた妊娠回避に関する指導と検査実施状況を確認する。レナリドミドの管理者および管理方法について確認し、コンプライアンス確認のため空シートの回収を行う。
  • ○レナリドミドなどの免疫調整薬を含む化学療法では、静脈血栓症及び動脈血栓症の発現リスクの評価を行った上で、必要に応じて、学会のガイドライン等1)を参考に抗血小板薬(適応外)又は抗凝固薬の予防投与を考慮する。
  • ○ダラツムマブ投与前の各種前投薬、自宅内服分のデキサメタゾン、血栓塞栓症予防の抗血小板薬(適応外)又は抗凝固薬の処方などが過不足なく処方されているか確認する。
  • ○倦怠感などの副作用のためデキサメタゾンの内服曜日を変更したり減量することもあり、カレンダー等を用いて投与スケジュールと用量を正しく共有する。

看護師からみたポイント

  • ○ダラツムマブでのInfusion reactionの発現有無の確認を行う。投与終了後も遅発性の症状がないか確認する。
  • ○治療開始後初期には皮膚障害が発現しやすいため、皮膚症状の観察を十分に行う。
  • ○疲労、便秘、筋痙攣などの副作用を生じる場合もあり、自覚症状の有無を確認する。
  • ○適正管理手順に沿って確実な配薬と薬剤管理を十分に行い、空シートを回収し内服確認を実施する。
  • ○レナリドミドは脱カプセルしないように指導する。
1) 日本血液学会 編; 造血器腫瘍ガイドライン 2024年版 第3.1版, 金原出版. 2024.
*本記事内で記載されている適応外使用の情報に関しては、東和薬品として推奨しているものではございません。

副作用の詳細

副作用の発現率

移植非適応の未治療多発性骨髄腫患者を対象としたMAIA試験1)におけるDLd療法(n=364)のGrade3以上の有害事象は好中球数減少50.0%、感染症32.1%、リンパ球数減少15.1%、肺炎13.7%、貧血11.8%、白血球数減少11.0%などであった。

1) Facon T, et al.: N Engl J Med. 2019; 380(22): 2104-15.

主な副作用有害事象共通用語基準

副作用名 主な症状 薬剤による対策 指導のポイント
Infusion
reaction自覚症状でわかる
  • ●悪寒、発熱
  • ●喘鳴、鼻閉、咳、くしゃみ
  • ●掻痒感、蕁麻疹
  • ●顔面浮腫、顔面紅潮
  • ●しびれ
  • ●脱力感
  • ●口腔内・咽頭不快感
  • ●動悸、頻脈、悪心
  • ●眼障害
  • ●ダラツムマブ投与開始1~3時間前にステロイド、解熱鎮痛薬、抗ヒスタミン薬を投与する。再発難治症例に対する1コース目Day1には抗ロイコトリエン薬(モンテルカスト等)を任意で投与可能である。(適応外)
  • ●遅発性のinfusion reaction発現予防として、ダラツムマブ投与後にステロイド等の投与を考慮する。
  • ●発現時は投与速度を下げるか、投与を中止する。
  • ●症状に応じて、解熱鎮痛薬、抗ヒスタミン薬、ステロイド、アドレナリン投与などを投与する。
  • ●重症度がGrade1~2、または2回目までのGrade3であれば、皮下注射製剤の場合は症状回復後に再開可能である。点滴静注製剤の場合は投与速度を半分以下にすることで再投与が可能である。
  • ●少しでも何か異常を感じたら、すぐにスタッフに伝えるように指導する。

発現時期の目安
day1-2

催奇形性
  • ●催奇形性
  • ●低用量ピル(OC)
  • ●子宮内避妊器具(IUD)
  • ●緊急避妊薬(避妊をせずに性交渉した場合など)
  • ※薬剤以外の避妊法として、両側卵管結紮・切除術がある。
  • ●投与開始予定4週間前から投与終了4週間後まで、避妊法の実施を徹底するように指導する。
  • ●確実な避妊法は「性交渉を控えること」であることを説明する。
  • ●性行為をする場合、下記の指導を行う。
    ・男性(患者・女性患者のパートナー):コンドームを正しく着用する。
    ・女性(患者):OC、IUD、両側卵管結紮・切除術のいずれかを行う。
    ・女性(男性患者のパートナー):上記避妊法の実施を奨める。
  • ●避妊に失敗した可能性がある場合、妊娠した可能性がある場合は、速やかに連絡するよう指導する。

発現時期の目安
day1-

血栓塞栓症自覚症状でわかる
  • ●急激な片側下肢の腫脹・疼痛
  • ●胸痛
  • ●突然の息切れ
  • ●四肢の麻痺
    など
  • ●低分子ヘパリン
  • ●ヘパリン
  • ●ワルファリン
  • ●低用量アスピリン
  • ●抗凝固薬
  • ●脱水は血栓塞栓症のリスクとなるため、適度な水分補給を心がける。
  • ●血栓塞栓症と思われる症状があらわれたら、すぐに医療機関に連絡するように指導する。

発現時期の目安
day1-

好中球減少検査でわかる
  • ●易感染
    (自覚症状に乏しい)
  • ●好中球数1,000/μL未満で発熱、または好中球数500/μL未満になった時点でG-CSFを考慮。
  • ●発熱時:抗菌薬(入院:抗緑膿菌活性を有するβラクタム薬、外来:レボフロキサシン500mg/回 1日1回、シプロフロキサシン200mg/回 1日3回+アモキシシリン/クラブラン酸(250mg/125mg)/回 1日3-4回など)
  • ●自覚症状がないため、感染の予防・早期発見が重要である。
  • ●悪寒・発熱・咳嗽などがみられた場合は直ちに主治医に連絡するよう指導する。
  • ●手洗いや速乾式アルコールなどによる手指消毒の順守、含嗽と歯磨きの励行。
  • ●シャワー浴などによる全身の清潔保持。
  • ●外出時はマスクを着用、可能な限り人混みは避ける。

発現時期の目安
day7-28

血小板減少検査でわかる
  • ●皮下出血
  • ●粘膜組織からの易出血
  • ●血小板数だけでなく、出血症状、合併症、侵襲的処置の有無等を総合的に考慮して、血小板輸血を検討する。
  • ●歯ぐきや鼻粘膜などの粘膜組織から出血しやすいため、歯みがきや鼻をかむときは優しく行う。
  • ●出血時は安静にし、出血部位をタオルなどで圧迫して止血する。
  • ●出血が止まらない場合は、病院に連絡するようにする。

発現時期の目安
day7-28

貧血自覚症状でわかる
  • ●口唇・眼瞼粘膜などの蒼白
  • ●息切れ
  • ●めまい
  • ●頭痛
  • ●耳鳴り
  • ●貧血傾向が出現した場合には、初期対応として鉄剤の投与を考慮する。
  • ●Hb値<7g/dLを目安として赤血球輸血を検討する。
  • ●緩徐に進行した場合、自覚症状に乏しいので注意。
  • ●体力低下に応じた周辺環境の整備や動作の補助。
  • ●四肢の冷えに対する保温。

発現時期の目安
day21-

重篤な
皮膚症状自覚症状でわかる
  • ●口唇や眼瞼の浮腫
  • ●水疱性の発疹
  • ●抗アレルギー薬
  • ●抗ヒスタミン薬
  • ●外用ステロイド薬
  • ●経口プレドニゾロン(短期投与)
  • ※剥離性、剥脱性、水疱性の皮疹、血管浮腫、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、中毒性表皮壊死症(Toxic Epidermal Necrolysis)などが疑われる場合はレナリドミドを中止し、皮膚科医と連携して対応にあたる。
  • ●口唇や眼瞼の浮腫、水疱性の発疹がみられた場合には、直ちに主治医へ連絡するようにする。

発現時期の目安
day1-

めまい・眠気自覚症状でわかる
  • ●めまい
  • ●眠気
  • ●自動車運転など危険を伴う機械の操作は避けるようにする。

発現時期の目安
day1-

末梢神経障害自覚症状でわかる
  • ●四肢のしびれ・痛み・筋力低下
  • ●腱反射減弱
確立した予防法・治療法はないが、下記の投与が試みられている。
  • ●デュロキセチン(適応外)
  • ●疼痛に対しては、プレガバリン、ミロガバリンなど
  • ※薬剤以外の予防・治療法として、運動療法が推奨されている。
  • ●少しでも症状に気づいたら、連絡する。
  • ●早期発見のため問診、ふらつきなどの動作支障の観察、NRSやVASなどの客観的評価を行う。
  • ●感覚障害(痺れや痛みの程度)と機能障害(ボタンを留めることができる、ペンで文字を書くといった機能の程度)の評価を行う。
  • ●患部のマッサージ・保温、運動(症状が悪化する場合は、中止する)。
  • ●感覚低下のため、けが・転倒・熱傷などの対策。

発現時期の目安
day3-

※本サイトに掲載されている薬剤の詳細は各製品の電子添文をご参照ください。
※本記事内で記載されている適応外使用の情報に関しては、東和薬品として推奨しているものではございません。