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2022.10.25

FOLFIRI(5-FU+l-LV+CPT-11)±Bev 療法

監修独立行政法人国立病院機構 東京医療センター 薬剤部 副薬剤部長 小川 千晶 先生

このレジメンの重要事項・ポイント等

Drからみたポイント

  • ○FOLFIRI±ベバシズマブ療法は進行再発大腸がんの1st lineのひとつとして推奨されており、強力な治療が適応となる症例に用いられる1)
  • ○術後補助化学療法として、静注5-FU+LV療法にイリノテカンを併用した場合(IFL療法、FOLFIRI療法)の再発抑制および生存期間に対する上乗せ効果は示されていないので2-4)、本治療は進行再発大腸がんの場合にのみ使用する。
  • ○本邦におけるイリノテカンの保険承認投与量は150mg/m2 である。
  • ○イリノテカン投与に伴う重篤な副作用を推察するため、投与前にUGT1A1遺伝子多型を調べておくことは有用な手段になり得るが、その遺伝子多型のみでイリノテカンの副作用をすべて予測することはできないため、遺伝子多型の有無にかかわらず、患者の全身状態を把握しつつ、副作用マネジメントを実施することが重要である。

薬剤師からみたポイント

  • ○FOLFIRI±ベバシズマブ療法はFOLFOX療法と比較して、好中球減少や重篤な下痢、悪心、嘔吐、脱毛などの出現頻度が高い。さらにベバシズマブを併用することによって、高血圧になったり、尿中に蛋白がみられたり、鼻血や歯肉、膣などの粘膜から軽度の出血を生じることがある。予想される副作用とその出現頻度を説明しておき、副作用が出現した時の対応策などをあらかじめ説明しておくことが重要である。
  • ○患者が服用している常用薬を確認し、抗がん薬と禁忌、相互作用がないかなどの医薬品情報の収集と整理、また多職種と円滑に情報共有が行えるような体制を構築しておくことが大切である。
  • ○重篤な下痢を引き起こす可能性があるため、あらかじめ医師と下痢時の対応策(下痢出現時に服用する止瀉薬;ロペラミドなどが処方されていることなど)を検討し、下痢対策が遅れないように努める。

看護師からみたポイント

  • ○FOLFIRI±ベバシズマブ療法は外来で行う場合が多く、自宅にて副作用を経験することが多い。特に高齢者ではキーパーソンを含めて在宅での副作用管理や注意点を説明しておくことが重要である。
  • ○在宅において、治療の継続が困難となるような副作用(特に注意する副作用として、38℃以上の発熱、激しい下痢、ひどい悪心や嘔吐など)を出現した場合には、すぐに病院に連絡するよう説明しておく。また、患者との電話の応対がスムーズに行えるように配慮しておくことも大切である。
  • ○ポート管理については医師からも説明されるが、ポート挿入中の注意点など、患者の不安軽減に努めるとともに患者の理解度や到達レベルなどを多職種間で情報共有しておくようにする。
  • ○ベバシズマブの初回投与時は90分で、忍容性がよければ60分、30分と段階的に投与速度の変更が可能であるため、医師の指示内容の確認や投与時の患者の状態を注意深く観察する。
1)大腸癌治療ガイドライン 医師用 2014年版, 金原出版
2)Saltz LB, et al.: J Clin Oncol 2007; 25(23): 3456-61.
3)Ychou M, et al.: Ann Oncol 2009; 20(4): 674-80.
4)Van Cutsem E, et al.: J Clin Oncol 2009; 27(19): 3117-25.

副作用の詳細

副作用の発現率

海外の臨床試験(BICC-C study)1)におけるFOLFIRI+Bev療法の副作用発現率は、好中球減少53.6%(30/56)、高血圧12.5%(7/56)、悪心10.7%(6/56)、嘔吐10.7%(6/56)、下痢10.7%(6/56)、脱水症状5.4%(3/56)、発熱性好中球減少症5.4%(3/56)などであった。

1)Fuchs CS, et al.: J Clin Oncol. 2007; 25(30): 4779-86.

主な副作用有害事象共通用語基準

副作用名 主な症状 薬剤による対策 指導のポイント
好中球減少検査でわかる
  • ●易感染
    (自覚症状に乏しい)
UGT1A1の遺伝子多型により重症化の恐れがあるので注意する。
  • ●G-CSF(好中球数に応じて)
  • ●発熱時:抗菌薬(シプロフロキサシンなど)(発熱性好中球減少症を懸念して)
  • ●自覚症状が乏しいため、感染の予防・早期発見が重要。
  • ●悪寒・発熱時の対処法と医療機関に連絡するタイミングの確認。
  • ●手洗い、含嗽、歯磨きの励行。
  • ●シャワー浴などによる全身の清潔保持。
  • ●外出時はマスクを着用。人混みは避ける。
  • ●こまめに室内を清掃。

発現時期の目安
day7-14

下痢自覚症状でわかる
  • ●軟便
  • ●水様便
  • ●腹痛
投与中・投与直後に発現する早発型と投与24時間以降に発現する遅発型に分類される。
  • ●早発型:抗コリン薬(ブチルスコポラミンなど)
  • ●遅発型:ロペラミド
  • ●重症例では、脱水・電解質異常に対する適切な補液を実施。
  • ●4回以上(Grade2相当)の下痢がみられたら医療機関に連絡または受診するよう指導。
  • ●食事の工夫(温かく、消化吸収のよい食事)。
  • ●乳製品の摂取を控える。
  • ●湯枕などによる腹部の保温。
  • ●肛門周囲を傷つけない(温水洗浄便座の使用など)。
  • ●イリノテカンの排泄遅延の原因となる便秘にも注意。

発現時期の目安
day1-7

悪心・嘔吐自覚症状でわかる
  • ●吐き気
  • ●嘔吐
  • ●食欲不振
中等度(催吐性)リスクに該当する(FOLFIRI療法)
  • ●day1:5-HT3受容体拮抗薬(グラニセトロンなど)+デキサメタゾン
  • ●day2-3(4):デキサメタゾン
  • ●day1-3にアプレピタントの追加併用も可。
  • ●強い不安をもつ患者では催吐リスクが高いため十分な説明が必要。
  • ●嘔吐が遷延しており、食事摂取が困難な場合は、医療機関に連絡または受診するよう指導。
  • ●悪心・嘔吐時は食事を工夫(水分量が多く、喉ごしのよいものなど)。
  • ●嘔吐後は、冷水やレモン水などでうがい。
  • ●軽い散歩などの気分転換。

発現時期の目安
day 1- 5

脱毛自覚症状でわかる
  • ●頭髪の脱毛
  • ●腋毛、陰毛、眉毛などの脱毛
確立された予防法はない
  • ●脱毛から回復までの過程(時期・抜け方など)を説明。
  • ●見た目の脱毛量が減るため、脱毛前の頭髪のカット。
  • ●低刺激のシャンプーを使用して優しく洗髪。
  • ●脱毛した髪が飛び散るのを防ぐため帽子・バンダナを使用。
  • ●ウィッグの購入(治療前に検討を始めたほうがよい)。

発現時期の目安
day14-

口内炎自覚症状でわかる 口腔内の
  • ●疼痛
  • ●発赤
  • ●出血
  • ●腫脹
  • ●含嗽薬を用いた含嗽。
  • ●疼痛がある場合は、鎮痛薬を含嗽水に混入。あるいは経口投与。
<予防>
下記が有用との報告がある。
  • ●クライオセラピー:5-FU急速静注5分前から30分間氷を口に含む。
  • ●治療開始前に歯科検診を実施。
  • ●口腔内を毎日観察。
  • ●適切なブラッシング法・舌ケアを指導。
  • ●口腔内と咽頭の含嗽の励行。
  • ●口腔内の保湿維持(口内保湿ジェルやリンスの使用)。
  • ●口内炎発現時は、食事を工夫(薄味、軟らかい形態、室温程度に冷ますなど)。

発現時期の目安
day2-14

※本サイトに掲載されている薬剤の詳細は各製品の電子添文をご参照ください。