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2023.11.1

Pola-BR療法

監修JA長野厚生連佐久総合病院 佐久医療センター 薬剤部 副主任 篠原 佳祐 先生

このレジメンの重要事項・ポイント等

Drからみたポイント

  • ○自家造血幹細胞移植非適応の再発・難治性のDLBCLに対するレジメンのひとつであり、他のサルベージレジメンと直接比較したデータは無いが(執筆時点)、遜色ない有効性が臨床試験で示されている。
  • ○亜型について、臨床試験では大多数がDLBCL、NOSであり、形質転換例は除外されていた。
  • ○3週間間隔、最大6サイクルが基本である。
  • ○主な治療関連有害事象は血液毒性である。海外・国内臨床試験では、FNの発現頻度は4.9%と高くないものの、ほぼ全例にG-CSF製剤が予防的使用されていたことに留意する。また、リンパ球数減少が高頻度に発生するため、細胞性免疫低下によるPCPをはじめとした日和見感染症に注意が必要である。臨床試験でも薬剤によってばらつきはあるが、予防投与が行われていた。

薬剤師からみたポイント

  • ○中等度催吐リスクに準じた予防的制吐剤を投与する。ただし、ベンダムスチンが2日間投与となっており、連日投与における推奨される制吐レジメンは無いため(執筆時点)、Day2以降の内容についてはあらかじめ医師と相談しておく必要がある。
  • ○本レジメンでのベンダムスチンの1回投与量は90mg/m2であることに注意する。
  • ○ポラツズマブ ベドチンによる末梢神経障害に注意する。臨床試験での中止・減量基準を参考に、早期発見し、適切に対処する。好発する蓄積投与量や有効な薬剤についてはまだよく分かっていない。
  • ○リンパ球数減少が高頻度に起こるため、日和見感染症に注意する。予防的抗菌薬を考慮する。
  • ○臨床試験ではFNの頻度は高くないものの、ほぼ全例で予防的G-CSF製剤が使用されていたため留意する。
  • ○感染症について、一般的な疾患そのものによる免疫力低下、好中球数低下に加え、本レジメンでは、ベンダムスチンによる細胞性免疫低下、リツキシマブによる液性免疫低下をきたすため、感染症(特に日和見感染症)に十分注意が必要である。
  • ○ベンダムスチンによる血管痛がしばしば起こるため、看護師とともに適切に対処する。
  • ○リツキシマブ再投与時にもインフュージョン・リアクションが再び生じることが報告されており1)、初回投与時と同様に十分な前投薬とモニタリングが必須である。

看護師からみたポイント

  • ○リツキシマブ、ポラツズマブ ベドチン投与時はインフュージョンリアクションに注意する。
  • ○ポラツズマブ ベドチン投与時はインラインフィルター付きルートを使用する。
  • ○ベンダムスチンによる血管痛がしばしば起こるため、薬剤師とともに適切に対処する。
  • ○末梢神経障害は減量・中止基準が設けられている有害事象のひとつであり、早期発見するようにつとめ、適切に対処する。
  • ○感染症リスクの対応が重要であり、普段の生活上での感染予防について注意喚起を行い、発熱時の対応などを確認しておく。
1) 日本病院薬剤師会雑誌; 55: 429-34.

副作用の詳細

副作用の発現率

再発・再燃 DLBCL を対象とした国内第Ⅲ相試験1)におけるBR療法(n=38)のグレード3以上の有害事象はリンパ球数減少89.5%、好中球数減少73.7%、白血球減少65.8%、CD4陽性リンパ球減少65.8%、血小板数減少21.1%、発熱性好中球減少症 10.5%、貧血7.9%などであった。

1) Murayama K, et al.: Ann Hematol. 2022; 101(5): 979-89.

主な副作用有害事象共通用語基準

副作用名 主な症状 薬剤による対策 指導のポイント
infusion
reaction自覚症状でわかる
  • ●掻痒感、蕁麻疹
  • ●顔面浮腫、顔面紅潮
  • ●しびれ
  • ●脱力感
  • ●口腔内・咽頭不快感
  • ●咳、くしゃみ
  • ●動悸、頻脈、悪心
  • ●リツキシマブの投与開始30分前に抗ヒスタミン剤、解熱鎮痛剤等の前投与を行う。
  • ●添付文書に従った投与速度で投与する。
  • ●発現時は投与速度を下げるか、投与を中止する。
  • ●症状に応じて、解熱鎮痛薬、抗ヒスタミン薬、ステロイド、アドレナリン投与などを投与する。
  • ●回復後は投与再開が可能だが、投与中止時の点滴速度の半分以下で再開する。
  • ●少しでも何か異常を感じたら、すぐにスタッフに伝えるように指導する。

発現時期の目安
day1

悪心・嘔吐自覚症状でわかる
  • ●吐き気
  • ●嘔吐
  • ●食欲不振
  • ●中等度(催吐性)リスクに該当する。
  • ●5-HT3受容体拮抗薬+デキサメタゾン
  • ●デキサメタゾンを減量し、NK1受容体拮抗薬またはオランザピンの追加併用も考慮。
  • ●強い不安をもつ患者では催吐リスクが高いため、十分な支持療法とday2以降の内服方法の説明が必要。
  • ●3~4日以上の嘔吐の持続、1日以上食事が困難な場合は、医療機関に連絡するよう指導。
  • ●悪心・嘔吐時は食事を工夫(水分量が多く、喉ごしのよいものなど)し、食事がとれない場合でも水分をとるように指導する。
  • ●嘔吐後は、口腔内を清潔にするため、うがいをする。
  • ●軽い散歩などの気分転換。

発現時期の目安
day1-7

静脈炎自覚症状でわかる
  • ●点滴部位の痛み
  • ●点滴した血管に沿った痛み
  • ●静脈炎発症時に鎮痛薬を考慮する。
  • ●血管外漏出ではないことを確認。
  • ●血流の良い太い静脈を選択。
  • ●毎回、できるだけ穿刺部位を変更。
  • ●静脈炎が発現した場合は、次回投与時に別の血管を選択。
  • ●血管を拡張させるため、ホットパックなどで穿刺部位の血管を温める。

発現時期の目安
day1-2

好中球減少
リンパ球減少検査でわかる
  • ●易感染
    (自覚症状に乏しい)
  • ●好中球数1,000/μL未満で発熱、または好中球数500/μL未満になった時点でG-CSFを考慮。
  • ●発熱時:抗菌薬(レボフロキサシン500mg/日、シプロフロキサシン600 mg/日など)
  • ●発熱性好中球減少症発症後は、患者のリスク因子に応じて、ペグフィルグラスチムの使用も検討する。
  • ●ウイルス感染が疑われる場合は、適切な検査と抗ウイルス薬の投与を行う。
  • ●自覚症状がないため、感染の予防・早期発見が重要。
  • ●悪寒・発熱時の対処法と医療機関に連絡するタイミングを確認。
  • ●手洗い、含嗽、歯磨きの励行。
  • ●シャワー浴などによる全身の清潔保持。
  • ●外出時はマスクを着用、人混みは避ける。
  • ●こまめに室内を清掃。

発現時期の目安
day10-21

末梢神経障害検査でわかる
  • ●四肢の感覚異常・機能障害
  • ●確立した予防法,治療法はないため、早期発見と適切な減量・休薬が最重要である。
  • ●有効性を示すデータには乏しいが、下記の薬剤が使われることがある。
  •  ・ ビタミン類
  •  ・ 漢方薬(牛車腎気丸など)
  • ●疼痛を伴う末梢神経障害には、ガバペンチノイド(プレガバリン、ミロガバリン)が有効なことがある。(ただし、厳密にはポラツズマブ ベドチンでの効果は不明である)。
  • ●少しでも症状に気づいたら、連絡するように指導。
  • ●早期発見のため問診、ふらつきなどの動作支障の観察、VAS などの客観的評価を行う。
  • ●感覚障害(痺れや痛みの程度)と機能障害(ボタンを留めることができる、ペンで文字を書くといった機能の程度)の評価を行う。
  • ●患部のマッサージ・保温、手指の運動(症状が悪化する場合は、中止する)。
  • ●感覚低下のため、けが・転倒・熱傷などの対策。

発現時期の目安
day2

皮疹自覚症状でわかる
  • ●皮疹
  • ●搔痒
  • ●重症度に応じて、外用・経口ステロイドを使用する。
  • ●重症の場合は、ベンダムスチンを休薬する。
  • ●保湿剤をこまめに塗布して、皮膚の保湿を維持。保湿剤は、すり込まずに押し当てるように塗布。
  • ●入浴・シャワー浴の際は、ぬるめのお湯、低刺激の洗浄剤でやさしく皮膚を洗浄。入浴後は、早めに保湿剤を塗布。
  • ●かゆみは、我慢せずに伝えるように指導する。

発現時期の目安
day1-

※本サイトに掲載されている薬剤の詳細は各製品の電子添文をご参照ください。